第15回 日本放射光学会奨励賞 (1/2)


福田勝利 会員

信州大学繊維学部ナノテク高機能ファイバーイノベーション連携センター

放射光光電子分光によるMOSFETゲートスタック構造の界面電子状態解析

 福田勝利氏は、全反射・偏光蛍光XAFS法とin-plane回折法を組合せ、ナノシートの新しい3次元構造解析法の開発を行った。ナノシートはシート法線方向に回折周期を持たないため従来の解析法を適用するのが難しく、さらに分子レベルの厚みしかないナノシートは極微量であり、その検出には工夫が必要となる。また、ナノシートでは、その機能を左右する面内周期構造や構成元素の化学状態などの構造情報を評価することが、材料開発にとって非常に重要であると認識されている。福田氏は、ナノシートの構造を解析するために、偏光依存XAFSと表面回折を組み合わせた新しい計測法を確立しており、放射光科学の展開にとっても大きな意義がある。さらに、新しい計測法を利用して、ルテニウム酸塩、酸化チタン、酸化タングステンなどの無機ナノシートの合成や構造解析に成功し、ナノシートの積層枚数と結晶化の温度依存など、原子レベルでの結晶化機構に関する重要な知見を見出している。
 福田氏は、ハード・ソフト両面での実験手法の開発から応用研究まで幅広い成果を上げており、また、研究をまとめる総合的な能力においても優れていると評価され、日本の放射光科学を支える若手の一人として今後の発展が大いに期待できる。
 以上のように、福田勝利氏の放射光科学の発展に寄与する功績は大きく、日本放射光学会奨励賞に十分値するものである。

日本放射光学会
会長 尾嶋正治

2011年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.24 No.2(2011)